MONOKOのこだわり
2022.11.7
株式会社サンクラフトは、刃物の町、岐阜県関市に本社を持つ1948年創業の、包丁を始めとする調理道具の老舗メーカーです。MONOKOでのお取り扱いにあたり、開発の経緯をうかがうにつれて、「台所育児」を提唱した坂本廣子さんとモンテッソーリ教育との共通点がとても多いことに気づかされました。今回は株式会社サンクラフトの川嶋康夫さんと、ICEモンテッソーリこどものいえの教師との対談形式で食育についてお話をうかがいました。
-まずはじめに、「台所育児シリーズ」誕生までの経緯を教えていただけますか?
サンクラフトさん(以下、S):「台所育児シリーズ」は子どものための調理道具です。台所育児を提唱して実践されていた故・坂本廣子さんが「大人用の包丁は子どもには使いにくいので、きちんと切れる本物の子ども用の包丁が欲しい」と製造先を探すために関市を訪れていた際に、創業者がその理念に共感し、1993年に「台所育児シリーズ」として共同開発されました。
-これまでなかったものを作ることになったと思うのですが、工夫されたのはどの部分ですか?
S:形としては、洋包丁によくある刃先のカーブをなくし、手首の動きが未熟な子どもでもきちんと食材が切れるように和包丁のようにほぼフラットにしています。握り部分も数年前にリニューアルして、より大人のものに近いフォルムになりました。また持ち手を白くして、握る部分のガイドになる赤い印が良く見えるように配慮しています。
刃は大人のものと同じなのでとてもよく切れます。「子ども用の包丁こそよく切れなければ」というのが坂本さんの一番こだわっていらしたところです。なぜなら切れない包丁は危ないからです!正しい取り扱い方法をすれば、よく切れるほうが余計な力が入らないので危なくないんです。
-自分の包丁がある、しかも本物というのは子どもにはうれしいですね。
S:せっかく料理をしたいと思った子どもに、うまく切れないのは自分のせいと思ってほしくないんですね。だから利き手によって切れ味に差が出ないよう、右利き用と左利き用を刃付けで微調整しています。
ICEモンテッソーリこどものいえ(以下、I):モンテッソーリ教育では「本物」を使うことをとても大切にしています。実体験を通して吸収する時期の子どもだからこそ、そのものの本質をきちんと備えた道具を用意してあげたいですね。
-モンテッソーリの現場では料理をどのようにとらえていますか?
I:料理に限らず、子どもたちは日常の家事分野にとても興味があります。お掃除やお洗濯、食器洗いなどいろいろな家事を一緒にやっているうちに料理にも関心が移ります。特に食べることは毎日のことで、生きることにもつながりますから自然な流れだと思います。
-その中で料理の効果は?
I:日常生活の活動の中で、いろいろなことを伝えられるのが料理だと思います。モンテッソーリ教育の根幹は平和教育ですから、いろいろな国のいろいろな料理や食材を通してその国の文化や時代背景、多様性などを伝える機会になります。また、料理には献立を考えて、買い物に行き、調理してふるまい、後片付けをするというたくさんの行程があります。ひとつひとつの中に学ぶところがたくさんあると思いますよ。
S:料理は五感をすごく使いますよね。触感、香り、温度…台所が子供の成長する場になってほしいという意味も込めて「台所育児」というネーミングになっています。
-大人が気を付けることはなんでしょうか?
I:子ども自身がやりたい!と思うことが一番大切です。そのためには普段の家事や料理を「魅せる」時間を提供します。一番効果があるのは「大人が楽しそうにやっている」ことではないでしょうか。やりたそうに見ているときに、「この子は今、何ができそうかな?」と大人が良いタイミングで誘うのが大切ですね。子どもが寝ている間やテレビを見ている間に済ませてしまうのはもったいない(笑)。
-頭ではわかっていても、子どもに頼むと時間がかかってしまって。つい手を出したり途中で引き取ったりしてしまいがちです。
S:今は忙しいお父さんお母さんが多いので仕方がないと思います。休日など時間に余裕があるときに、家族で献立から考えて一緒にお買い物に行って、というように「子どものとのコミュニケーションを取れる時間」と定義し直せば、とても有意義だと思います。
I:そうですね。子どもがやりたがる時期は本当に短いです。この時期ちょっとだけ大人が頑張って時間を取ると、大きくなった時にきっとリターンがありますよ(笑)。その時は大変かもしれませんが、幼児期のいっぱい吸収したい時期に一緒にやったことは生きる土台となりますから。我が家は男の子ですが、学校に行くようになってお友達との付き合いのほうが大事になったりして、いったん家事熱が収まりましたがそれが普通。今では一緒に家事分担してくれています。
-子どもが台所に立つ前に保護者ができること、気を付けることは何でしょうか。
I:まずは子どもが魅力的に感じる道具を準備しましょう。それから子どもは興味のあることに対しては、意識をもって集中して見たり聞いたりしますので、危ないことやしてはいけないことを最初に伝えます。具体的には包丁のどこが切れるのか、どうしたら切れるのかなどです。
S:そうですね。包丁の仕組みと持ち方、それから刃を前後に動かすと切れるといったことは必ず伝えます。包丁を手から離すときに置く場所を私たちは「包丁の休憩場所」といっていますが、刃を自分の外に向けてまな板の上の部分に置きます。何よりケガをしない環境を作るのが大切です。
-道具は子ども用を用意するとして、台所はどうしても大人サイズになってしまいますね。
I:教室では子どもは幼児用の椅子と机を使って、座って活動しています。
S:台所の場合はステップが広めの踏み台を用意してもらって、おへそとまな板が同じ高さになるようにしてください。
-子ども自身が安定した姿勢が取れるようにということですね。
S:安定といえば、食材も転がらないように半分に切ってから渡したりします。両手別々の動きをするのは小さなお子さんには難しいので、ピーラーを使う時は、食材はまな板の上に置いてピーラーだけ動かす方が作業が楽だと思います。
I:姿勢も食材も安定していることが安全につながります。
-はじめて切るのはどんな食材がいいですか?
S:やわらかい食材から始められるといいと思います。包丁やピーラーはキュウリがおすすめです。薄いチーズやハムなども切りやすいですね。キッチンバサミは料理教室では鶏皮を取るのに使っています。
-子どもとの料理を始めるにあたって大人の心構えを教えてください。
I:大人と同じことはできませんから、この子が今どの部分ならできるかな、というのは常に気を付けてください。まだ難しい部分については「ここは大人の仕事ね」と伝えます。大人がタイミングをきちんと判断します。
S:大人がやったほうが絶対早い(笑)と思いますが、子どもが成長するいい機会だと思って時間を作って欲しいですね。
-どのように言葉掛けをすればいいでしょうか。ほめたほうが良いのでしょうか?
I:子どもって自分のことをすごいと思われたいわけではなくて、人として認められたいんです。なので教室では誇張した表現はあまり使いません。「できたね」「切れたね」といった、認めたり共感の言葉がけをしています。ご家族でしたら「ありがとう」「助かったよ」などもとてもいいと思います。
子どもの「できた!」を大切にしたいと、信念をもって作られている台所育児シリーズの調理道具。30年ほとんど仕様変更することなくロングセラーとなっているのも納得です。食べることは生きることに直結しますから、ぜひスタートから本物の道具を使っていただければと思います。
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