環境づくり
2019.10.25
子どもが2~3歳になると、些細なことで、急に怒り出したり、泣き出したりすることがあります。いつもとちがう靴を履かせようとした、お母さんのマグカップをお父さんが使った、幼稚園の帰りにいつもとちがう道を通ったなど、この時期の子どもにとって「いつもと同じ」は、とても重要な意味があるのです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、大人のケアが必要なので、1日のほとんどを、親やお世話をしてくれる大人と密着して過ごします。
子どもが、物の置き場所や所有者、物事の順序、何気ない習慣などに強くこだわる時期を、モンテッソーリ教育では「秩序の敏感期」といいます。生後数カ月からあらわれ、2〜3歳をピークに6歳ごろまで続くといわれています。
「いつもと同じ」に強くこだわるのは、この時期の子どもが、見たもの、聞いたもの、経験したことなどの情報をファイリングして、頭の中に羅針盤のようなものを作ろうとしているからです。
「子どもにとって外界の秩序は、大人が家を建てる地盤や、魚が泳ぐ水にも相当する重要なもの」というモンテッソーリの言葉がありますが、今、まさに自分の位置を理解しようとしているときに、あるべきものがいつも決まった場所にある、毎日同じ順序で物事が進んでいくことは、とても重要なことなのです。
幼児期の子どもは、秩序という羅針盤を手に、この世界でどう動けばいいのか、ひとつひとつ確かめている真っ最中です。大人が「いつもと同じ=秩序感」を尊重することで、子どもは安心して自由に動くことができ、知性を働かせる土台を育むことができます。
子どもの秩序感を尊重するためには、大人が「いつもと同じ」環境を用意してあげることが大切です。子どもが急に泣いたり、怒り出したときは、次の項目を参考に、どこが「いつもと同じ」ではなかったのか振り返ったり、子どもの話をじっくり聞いたり、行動を観察してみてはいかがでしょうか。
<いつもと同じ環境とは>
場所:いつもと同じ場所に物がある
順序:いつも同じ順番で行動できる
所有:持ち物と持ち主がいつも同じ
習慣:いつもと同じ方法
「ああ、これがいつもとちがってイヤだったのか!」とわかると、大人も納得して、子どもが泣いたり、ぐずったりしても冷静に受け止めることができます。
日常生活では、物の置き場所を決めて、大人も子どもも、きちんとそこに戻す習慣をつけるといいでしょう。同じ場所に置くことにこだわる時期ですから、大人が環境さえ整えれば、自然に片付けの習慣も身に付いていきます。
朝起きてから、着替え、朝食、歯磨きなど一連の生活習慣の順序や方法、幼稚園や保育園の行き帰りの道順、公園に履いていく靴も、大人の都合で急に変えたりせず、できるだけ、子どもに意思確認をしてみてはいかがでしょうか。変更をする理由を伝え、AかBというように2択の選択肢を与えるとスムーズです。
この時期は、少々時間がかかっても「いつもと同じ=秩序感」を尊重することで、子どもの心が落ち着いていきます。
秩序の敏感期を知ると、これまで「イヤイヤ期」「反抗期」「わがまま」で片付けていた子どもの不機嫌が、まったく別のものに見えてきます。大人も穏やかな心で子どもと向き合えるようになるでしょう。
■関連リンク
アイ・シー・イーでは、「モンテッソーリ教育」がどのような考え方のもとに行われ、どのような効果があるのかをお伝えする、保護者さま向けセミナーを定期的に行っています。ぜひご参考になさってください。
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